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歴史的感覚

前回の記事で、私が高校時代の世界史の先生におしえてもらった事を交えて、世界史の年号について書きました。この先生は、世界史の授業の初回で二つの課題を出しました。それは、

1.中国の歴代王朝を暗唱する
2.先生お手製の歴史小説のリストから一つ選んで、感想文を書く

つまり、何も教えないうちに、中国の王朝を時代順に暗唱するのです。
「三皇・五帝・夏・殷・周・春秋戦国・秦・漢・魏ショク呉・晋・胡・南北朝・隋・唐・五代・宋・元・明・清・中国」
初めの方は、余りに古い時代で役に立たなかった気もするのですが、漢あたりから役に立ちます。一つの地域の王朝の変遷を覚えていれば、時代が下るにつれ、他地域との関わりが出てくるので、ヨーロッパや中東であの時代なら、中国はあの時代、というように、横のつながりで世界全体をとらえられるようになるのです。

次に歴史小説の方です。感想文はレベルの高い物が求められるのではなく、読んだ証拠のようなものです。各人に一枚ずつリストが配られたのですが、私は今になって、そのリストを捨ててしまったことを大いに後悔しています。中学生の息子が読書好きだからです。そして、この歴史小説を読むと言う課題は、どうやら中学・高校の歴史の先生の定石になっているようで、息子にも似た宿題が出ています。息子の学校の先生は、リストではなく本を指定し、定期テストで読んだかどうか少しチェックしています。かなりボリュームのある本が指定されるので、定期テストの範囲に入るのは、かなり先になります。今までに指定された本は、

ローマ人の物語(ハンニバル戦記)
竜馬が行く
坂の上の雲

中学に上がっていきなり、世界史など全然していないのに、いきなり「ハンニバル戦記」でした。ローマ人の物語は、全体は何巻にも及ぶ大作ですが、この1冊で、息子は大好きになり、シリーズ全てを読破しました。

ちなみに私は、リストはないけれども、自分が読んだ本だけは覚えていて手元にあります。それは、「背教者ユリアヌス」(辻邦生、中公文庫、全3巻)。

ユリアヌスというのは、4世紀のローマ帝国の皇帝です。当時、ローマ帝国にはキリスト教がかなり普及していたのですが、あえてギリシアの神々への信仰に戻ろうとしたため「背教者」と呼ばれています。小説では、皇帝に即位する前の若い頃から、メソポタミアでペルシアと戦って戦死するまでを描いています。戦死したユリアヌスの遺体とともに、ローマ軍が引き上げていくラストが印象的です。

すでに夕映えは消えていた。ただ風だけが、空虚な砂漠を吹き、砂丘の斜面に吹き、砂丘の斜面にごうごうと音をたてていた。砂はまるで生物のように動いて、兵隊たちの踏んでいった足跡の乱れを、濃くなる闇のなかで、消し続けていた。

現在から見ると、キリスト教は広く普及しているので、ユリアヌスの政策は反動的に見えます。でも、当時に生きていたらどうでしょうか。普及していく過程では、どんな宗教も新興宗教です。キリスト教がローマ帝国で公認されたのが313年、ユリアヌスの死は363年で、長い歴史から見れば、それほど違いません。どんなに志が高い人間でも、自分の生まれた時代の状況の中でベストを尽くすしかない、今読み返すと、そんなことを感じます。

ハンセン病患者の精神医療に携わった故神谷美恵子先生が、患者の隔離・収容をすすめた光田先生が、隔離・収容が非人道的だと非難されるようになったことについて、「新版 人間を見つめて」(朝日選書)で書いています。

(薬でらいが治るようになると、患者さんを強制的に隔離収容するという政策がにわかに非人道的なものにみえてきた。光田先生が主張された方針が、園内からも外国からも非難されるようになった。・・・いったい、人間のだれが、時代的・社会的背景からくる制約を免れうるであろうか。何をするにあたっても、それは初めから覚悟しておくべきなのであろう。(らいとともに 光田健輔の横顔 p.195-6)

かつては隔離が患者に人間らしい生活を保障することだったのに、時代が変わり、隔離することの意味も変わってしまったわけです。でも、それがわかっていても、甘受し、現在でのベストを尽くすしかない。それが、歴史的感覚であり、歴史を学ぶ意味でもあるのかも知れません。
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1995年早生まれの男の子(ミント)、1997年生まれの女の子(パセリ)の母親です。主として、目からウロコが落ちるステキな子育て・学力養成の理論&実践方法を提供しているどんぐり倶楽部について書いています。

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